
札幌最終週の厳選勝負

当日一番・金爆マルチ
未勝利を勝ち上がるまでに戦ってきた相手を見れば、その馬の物差しがある程度分かる。この⑩ジーティーエスピが未勝利時代に戦ってきた相手は、その後に重賞勝ちを収めるなど、骨っぽい馬ばかり。このクラスで通用する下地は、とうにできていたと見ていい。
前走の4着は、半年ぶりで昇級初戦だったことを考えれば上々の内容だ。陣営の話では、放牧から体が減って帰ってきた影響で、万全の追い切りができなかったというじゃないか。それでいて、勝ち馬からコンマ1秒差。力負けでないことは明らかだ。永島騎手も「この距離では力みがありました」とコメントしているように、ベストは1200m。今回は距離短縮、叩き2戦目、そして鞍上は岩田望来に強化。これだけ好条件が揃えば、勝ち負けは必至だろう。
唯一の懸念は、鼻出血の持病持ちという点。こればかりはレースに行ってみないと分からないが、体調さえ問題なければ、前走で見せた以上のパフォーマンスを発揮してくれるはずだ。全てのピースが噛み合った今回、勝ち名乗りを上げるのはこの馬だ。
対抗には⑥フランクスピードを推す。前走の結果だけを見て、この馬を見限るのは早計すぎる。あれは競馬に参加できていない、完全に度外視すべき一戦だ。
初めての1200m、揉まれ弱い気性で最内枠、おまけに出遅れ。直線では前が壁になり、完全に脚を余していた。これだけの悪条件が重なれば、どんな馬でも力を出すのは不可能だ。
だが、忘れてはならないのが、この馬が持つ本来の能力。新馬戦で見せた勝ちっぷりは、このクラスでも十分に通用するだけの素質の高さを示している。一度1200mの流れを経験したこと、そして鞍上に横山武を配してきたことからも、陣営がまだこの条件で見限っていないのは明らか。開幕週の走りやすい馬場も歓迎だろう。スタートさえ五分に決めて、スムーズに運べれば、前走とは全く違う走りを見せてくれるはずだ。

穴の鉄板万券
鞍上チェンジ、外枠確保、そして全2勝を挙げている中山コース──これ以上ない条件が揃ったのが⑮モンドプリュームだ。
この馬は先行して押し切るタイプではない。前に行きすぎると最後に甘くなるので、むしろ中団あたりで脚をためて差しに徹する形がベスト。平坦ローカルよりも直線に坂のあるコースで差し脚を伸ばすタイプであり、中山1200mこそ舞台適性が最も高い。
昨年末に短距離路線へ舵を切ってからは8戦して5着以下なし。勝ち味に遅い印象はあるが、それは相手レベルの問題だ。サフランヒーロー(現オープン)にやられた新潟戦や、関西圏のハイレベル戦での4着はその典型。要するに、力は常に発揮できる馬であり、相手次第で順番はすぐに回ってくる。
前走も中団から上がり2位の脚で勝ち馬に0秒3差まで詰め寄った。常に36秒台の上がりを安定して使えるのは本格化の証であり、一見すると中途半端に映るこの決め手も、坂のある中山では強烈な武器になる。
調教師も「前走くらいの位置でいい。相手に恵まれず勝ち切れていないが、安定して走れているし今は雰囲気もいい」と語り、除外続きで調整に苦労した近走に比べても今回は叩き2戦目で態勢は万全。
相手関係を見渡しても、現級で安定して連対しているのはモンドプリュームと⑭ビッグドリームくらい。そのビッグドリームも前走はローカルの前残り戦で、勝ち馬に4馬身突き放されており、価値は限定的だ。
ここまで条件が揃った今回は、「勝ってください」と言わんばかりのシチュエーション。中山替わりで一発決めるなら、間違いなく今回だ。

阪神開幕週の厳選勝負
ここは⑭インユアパレスで鉄板だ。この馬がオープンクラスでトップクラスの能力を持つことは、関係者の間では周知の事実。敗戦には全て明確な理由がある。
まず2走前は、直線で前が壁になるという致命的な不利。完全に脚を余しながら、それでも2着と僅差の4着まで追い上げた内容は、負けてなお強し。むしろ、この馬の末脚の破壊力を再認識させるに十分なレースだった。そして前走の東海S(G3)2着。勝ち馬が規格外だっただけで、川田が「しっかりと能力を出し切ってくれました」と語るように、この馬自身の走りは完璧。重賞でも勝ち負けできる力を改めて証明した。
陣営からは「内で囲まれるのがダメ」という明確な弱点が示唆されている。これまでの取りこぼしは、そのほとんどが内枠で窮屈な競馬を強いられたことに起因する。だが、今回はどうだ。願ってもない外枠(⑭番)を引き当てた。これで最大の懸念材料は完全に消滅した。鞍上も手の内を知り尽くす川田が連続騎乗。陣営も「ここを目標に順調」と万全の仕上げを公言している。
能力最上位、鞍上は名手、状態は万全、そして最大のウィークポイントを克服する絶好枠。これだけの好条件が揃って、勝ち負けにならないはずがない。ハンデ57キロも、この馬の能力からすれば恵まれたほど。ここは単勝で分厚く勝負。馬券の軸はこの馬以外に考えられない。
近2走は距離が長く、直線で甘くなったのも当然の結果。言い換えれば、度外視可能だ。3走前に今回と同じ阪神ダート1400mで、ハイペースを先行して3着に粘った内容こそがこの馬の真価。条件が大幅に好転する今回、自分のリズムで運べればまず勝ち負けに加わってくる。
2走前は休み明けの激流、前走は鞍上も手替わり勝負度合いが低かった。叩き3走目となる今回が絶好の狙い目。鞍上も坂井瑠星へと大幅に強化され、陣営の勝負気配が窺える。3走前に見せた圧勝劇の再現も十分可能。一変を警戒すべき一頭だ。

阪神開幕週の厳選勝負
日曜阪神10R、ここは⑤テーオーエルビスの能力が一枚も二枚も上だ。単なる能力比較に留まらず、今回は陣営の「勝負気配」という見えざる要素が、その信頼度をさらに押し上げている。
まず、オーナーである小笹公也氏は、大阪に本社を構える生粋の「阪神ご当地馬主」。その所有馬が、待ってましたとばかりに阪神開幕週に使ってくる。この事実だけで、ここが単なる一戦ではなく、明確な目標として設定された「大ヤリ」のレースであることは競馬の機微を知る者なら誰でもわかる。
その期待を裏付けるだけの圧倒的な能力を、この馬は既に示している。昇級初戦だった前走は、完全に前残りの展開を4角7番手から楽々差し切り。関係者が「終わってみれば楽勝」と語るように、着差以上に力の違いを見せつけた。2走前には今回と同じ舞台で5馬身差の圧勝を演じており、上がりのかかる阪神コースへの適性も証明済みだ。
高柳大調教師が「暮れ、来年は重賞を勝てる馬」と公言するほどの器。骨折明けを一度叩かれ、状態が上向く今回、3勝クラスで足踏みしている姿は到底想像できない。エンジンのかかりが遅い面があり、取りこぼしの可能性がゼロとは言わないが、それすらも杞憂に終わるだろう。ここは通過点。鉄板の軸として信頼する。
対抗には②ストレングスを推す。勝ち切れないレースが続き、いわゆる「善戦マン」のイメージがつきまとうが、その安定感はメンバー屈指だ。ルメール、武豊、松山といった名手が続けて騎乗している事実が、この馬の素質の高さを物語っている。
近2走の3着も、2走前はスタートで躓き、道中で手前を替えずに走るロスがありながらのもの。前走も厳しい先行争いに巻き込まれ、展開が向かなかった。決して力負けではない。これまで戦ってきた相手関係を考えても、このクラスで崩れることは考えにくい。
課題は初の1200mだが、持ち前の前進気勢の強さから、距離短縮はむしろプラスに働く可能性すらある。叩き2走目で状態も上向き。本命馬に唯一迫れるとしたら、この馬だろう。軸馬からの相手として、これ以上ない一頭だ。
今開催の札幌リーディングは18勝を挙げた横山武でほぼ確定だが、その背中を追う2位・丹内も存在感を示した一人。最終週の舞台で丹内が「次は期待できそう」と色気をのぞかせているのが②ウインキララだ。
前走はツメを痛めた影響でスライド出走となり、しかも距離も2000mへ延長される苦しい条件。それでも丹内がうまく導き、不安を抱えた状況ながらも格好のつく競馬を見せた点は高く評価できる。関係者も「正直どうかと思っていたが、あの内容なら先が楽しみ」と口を揃える。
その前走に比べれば明らかに状態面も上向き。「馬が良くなっている」と陣営も太鼓判を押しており、前走以上のパフォーマンスが可能とみるのが自然だ。加えて、丹内の継続騎乗というのも心強い。手の内を掴んだ鞍上が仕掛けどころを間違えなければ、未勝利突破のシナリオは十分に描ける。
もちろん最終週とあって権利持ちが揃い相手は強力だが、ウインキララ自身もすでに「勝てる力を秘めた馬」であることは証明済み。あとは展開ひとつでゴール前の主役になれる。ここがチャンスだ。