牝6/53kg 亀田温心/斉藤崇史
《注目度3.0点》
前走の佐世保Sを快勝し、予定通り連闘で北九州記念へ。斉藤崇師は「勝ったら北九州記念という予定だったので、最高の結果。ゲートも出るようになってきている」と手応えを語る。ゲート難が解消され、スムーズなスタートが切れるようになった点が最大の進展。これにより、これまでの持ち味である先行力がより活かせる流れとなる。
また、「この血統は年を重ねて良くなってくる」と師が語るように、成長曲線が緩やかで、6歳にして本格化の兆し。姉弟揃っての重賞挑戦となる今回は、厩舎サイドの意気込みもひとしお。
牝5/53kg 高倉稜/武英智
《注目度2.5点》
小倉で【3-1-0-1】という好成績を誇る、生粋の“小倉巧者”。今年の北九州記念に向けて、陣営は1年前から逆算して準備を進めてきた。武英師も「去年OP入りしたときに『来年の北九州記念を目標に』と話していた」と語る通り、この舞台は明確な目標地点であった。
今回は栗東でじっくりと仕上げられ、先週末には早々に小倉入り。輸送に敏感で調教を積むと馬体が減りやすいタイプだが、「この中間は全然減らない。具合もめちゃくちゃ良い」と状態面にも太鼓判。2走前はスタートで後手を踏んだが、スムーズなら違う結果もあったとの見立て。「好位のインでじっと脚を溜められれば面白い」と好位付けのイメージ。
牝5/56.5kg 高杉吏麒/前川恭子
《注目度3.0点》
昨年の北九州記念では16番人気の低評価を覆して3着に好走し、そこからアイビスSD勝利→セントウルS3着と、一気に夏の主役に躍り出た。今年もその流れをなぞるように、前川師のもとで万全の態勢が整いつつある。
「寒い時期は本当にダメ。冬毛もモコモコでしたが、今は代謝も上がって毛も抜け、筋肉質のボディがはっきり分かる」と師は語る。馬場入りにも落ち着いて対応できるようになり、精神面での成長も大きい。「前と違って落ち着きが出てきた」と調教師も手応えを感じている。サマーヒロインへ向けて、今年も準備万端だ。
牡6/57kg 酒井学/石橋守
《注目度3.0点》
今回が6度目の重賞挑戦。過去にはCBC賞4着、シルクロードS5着と善戦を続けながら、惜しくもタイトルには届いていないが、今夏の北九州記念は陣営も「ビッグチャンス」と位置付ける。
前走後は約5カ月の休養を経て先月6日に帰厩。放牧効果で「馬が良くなって帰ってきた。ドッシリ構えている感じがいい」と石橋守師も充実ぶりに目を細める。25日の追い切りでは坂路4F51秒2-12秒0をマーク。「今までなら終いに12秒台前半がやっとだったが、12.0で踏ん張れた。成長を感じる」と手応え。
懸念されるのはゲート。「最近はちょっと良くないが、2週連続で練習している。そこだけクリアすれば」と厩舎サイド。脚質に幅があり、「先行策にこだわらず控えても脚は使えるからね」と柔軟に構えている。
牡3/54kg 小崎綾也/河嶋宏樹
《注目度3.5点》
前走の葵Sで13番人気ながら逃げ粘って2着と健闘。今回は初めて古馬と相まみえる一戦だが、陣営は「いまがチャンス」と手応えを強めている。「腹をくくって行った前走の戦法がハマった。スピードを生かすなら1200mがベスト」と適性を強調。小回りの小倉も歓迎材料と語る。
1週前追い切りではCWで6F77秒8-11秒9の自己ベスト、最終追い切りも坂路で馬なりながら4F53秒0-12秒0をマークと、調整は順調そのもの。「気合が乗ってきているし、今週に入ってからレースモードに切り替わった」と小崎も状態の良さを実感する。
この馬の強みはなんと言ってもスピード。小崎は「逃げたい」と積極策を示唆しており、先行有利な開幕2週目の馬場も追い風。「絶対に逃げなければというわけではないが、ある程度は前に行くと思う」と河嶋師も展開を見据えている。
牡3/54kg 吉村誠之/大久保龍
《注目度3.0点》
約5カ月ぶりの実戦で、ここが復帰戦となるが、休養中に大きな成長を遂げた様子。助手は「ソエを痛がっていたので休ませましたが、今は脚元の感じも良くなっています」と語り、坂路でラスト1F12秒1を馬なりでマークするなど、調整過程にも手応え。
昨夏には新馬→小倉2歳S制覇と、夏場に強い面を見せた。今回も季節の後押しが見込める。「今のところ暑さも問題ないし、トモもしっかりしてきた。精神的にも大人になってきた」と陣営。初の古馬との対戦となるが、2歳時からの重賞実績と夏場の好相性を考えれば、いきなりの好走も視野に入る。
牡4/55kg 団野大成/斉藤崇史
《注目度3.5点》
伊良湖特別→淀Sと連勝を飾り、勢いそのままに北九州記念へ。2歳下の姉ヤマニンアンフィルとの“姉弟同時出走”も話題だが、斉藤崇師は「重賞に入っても見劣りしない」と力強く語り、その素質に太鼓判を押す。
もともと能力の片鱗はあったが、未勝利の身で臨んだ2勝クラスをいきなり突破。そこからは芝・ダート両方で結果を出し、直近4戦3勝と本格化。この馬の特徴は、ダートでも戦えるパワーと芝で先行できるスピードという“二刀流”の器用さ。「この血統は年を重ねて良くなる」と語る師の言葉通り、肉体・精神ともに充実期に入った印象だ。
牡5/55kg 角田大和/角田晃一
《注目度2.5点》
今年に入って芝1400を2戦して7着、9着と着順こそ目立たないが、いずれも着差はわずかで内容は悪くない。今回の北九州記念では条件が好転し、「平坦の小回り1200はこの馬にとってベスト」と陣営は力強く語る。
京都の下り坂ではリズムを崩す場面もあったが、小倉の平坦コースならその不安も払拭できる見込み。ハンデ55キロも実績馬に比べて手頃で、先行力を生かした競馬ができれば一変の可能性は十分。過去に小倉で2勝を挙げており、コース相性も申し分ない。
牝6/56kg 小沢大仁/福永祐一
《注目度2.5点》
昨年のCBC賞を制した実績を持つが、以降は苦戦が続いている。福永師はその要因を「どんな条件でも勝てる馬ではない」としながらも、近走の敗因を明確に分析。3走前と2走前はフルゲートの大外枠でロスが大きく、前走は初の直線競馬で適性を欠いたと冷静に振り返る。
鍵を握るのは斤量。牝馬で56キロは実績があるだけに仕方ないが、今の上昇気流に乗れていない状態での56キロを克服できるかどうか。
牡6/57.5kg 幸英明/中竹和也
《注目度3.0点》
前走の鞍馬Sで約1年半ぶりの勝利を挙げたばかり。厳しい戦績が続いた中での復活劇に、「重馬場が味方したかもしれないが、フロックではない」と中竹師。その背景には、近走とは明らかに異なる内容の追い切りがある。
最終追いでは栗東坂路で51秒6-12秒2と力強い動きを見せ、「全身を使った素晴らしい動きだった。『おーっ』と声が出るくらい」と師も絶賛。「体の張りもあるし、ここに来て状態は上向き」と、万全の仕上がりに手応えを得ている。
一方で、課題として挙げられるのが“輸送”。過去には北海道遠征時に輸送熱を出したこともあり、「小倉に向かう道中で体重が減らなければ…」とも。当日の気配を確認したい1頭だ。
牝3/53kg 坂井瑠星/坂口智康
《注目度3.5点》
前走の葵Sで15番人気の低評価を覆し、見事な差し切り勝ちで重賞初制覇を達成。その勢いそのままに、重賞連勝を狙う。坂口智師は「前走から芯が入ってきた」と成長を実感しており、厩舎としても手応えは十分だ。元騎手の三津谷助手も「気の強い女の子。パドックでは二人引きだが、落ち着きも出てきた」と精神面の充実を語る。
今回は初の古馬相手となるが、昨年の覇者ピューロマジックと同じく3歳牝馬×ハンデ53キロの組み合わせ。「ハンデ差を生かして、いい位置で流れに乗りたい」と指揮官。“夏の新星”が、サマースプリント戦線に旋風を巻き起こすか。
牡4/56.5kg 川田将雅/友道康夫
《注目度3.5点》
これまで【4.8.0.1】の堅実な戦績を誇り、芝1200では7戦全連対という抜群の安定感。オープン昇級後は3戦連続2着とあと一歩届かぬレースが続くが、「常に100%の力を出せる馬」と友道師はその能力に絶大な信頼を置く。
これまでの敗因には展開の難しさもあり、「早めに抜け出すとフワッとするし、後ろからだと届かない。今回は2~3番手で溜めたい」と指揮官。テンに速くなりやすい重賞の流れで、好位から抜け出す理想的な競馬を描く。
過去に小倉1200mの北九州短距離Sで2着と好走歴もあり、舞台適性も十分。「小回りの方が競馬しやすいし、小倉は合っている」と語る師にとっても、小倉重賞・スプリント重賞ともに未勝利の舞台。悲願のタイトル奪取へ、陣営の士気は高い。
牡7/57kg 国分優作/坂口智康
《注目度3.5点》
今年2月の北九州短距離Sでオープン初勝利を挙げた。鞍馬Sではペースが緩く差し届かずの2着だったが、上がり最速を記録し、能力の高さを再証明。「GⅠだと少し足りないが、それ以外では安定して走れている」と坂口智師。
大型馬ゆえ調整には工夫が必要だが、今回は2週連続で坂路を2本消化するなど負荷を強め、上積みを意識した仕上げ。「前走以上に良い」と助手も胸を張る。福島や小倉といった小回り・平坦コースへの適性も高く、「競馬が上手になってきた」と師も精神的な成長を認める。厩舎としては勝てる可能性のある馬を2頭出し。指揮官にとってもかなり力が入る1日になりそうだ。
牡7/58kg 内田博幸/中尾秀正
《注目度3.5点》
昨年の北九州記念で2着に惜敗し、そのリベンジに燃える。今年はトップハンデの58キロを背負っての参戦となるが、陣営はその充実ぶりに自信をのぞかせる。中尾秀師は「衰えは感じない。予定通りにメニューをこなしているし、今が一番充実している。力は出せるよ」と語る。
長年の課題だったゲート難も解消し、今ではスタートに不安なし。「ゲートが安定してから成績も安定した」と語る通り、精神面でも大きな成長が伺える。
昨年は軽ハンデの3歳馬に逃げ切られたが、今年はその借りを返す構え。春雷Sでのトップハンデ勝利で勢いは本物。蹄や顔面のケガといった逆境も乗り越えてきた不屈のベテランが、重賞初制覇へと満を持して臨む。
※これまでに入手した関係者情報を基に、重賞出走予定の有力馬について解説します。【注目度】は5点満点で評価し、情報のトーンや調教の動き、臨戦過程を加味した上で算出したものです。なお、これらの点数は必ずしも最終結論と一致するとは限りません。
馬番 | 馬名 | 性齢 | 斤量 | 騎手 |
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1 | ヤマニンアンフィル | 牝6 | 53 | 亀田温心 |
2 | カリボール | 牡9 | 56 | 西塚洸二 |
3 | レッドヒルシューズ | 牝5 | 53 | 高倉稜 |
4 | ミルトクレイモー | 牡5 | 54 | 松山弘平 |
5 | モズメイメイ | 牝5 | 56.5 | 高杉吏麒 |
6 | メイショウソラフネ | 牡6 | 57 | 酒井学 |
7 | クラスペディア | 牡3 | 54 | 小崎綾也 |
8 | エイシンワンド | 牡3 | 54 | 吉村誠之 |
9 | ヤマニンアルリフラ | 牡4 | 55 | 団野大成 |
10 | タマモブラックタイ | 牡5 | 55 | 角田大和 |
11 | ドロップオブライト | 牝6 | 56 | 小沢大仁 |
12 | スリーアイランド | 牝5 | 52 | 田口貫太 |
13 | オタルエバー | 牡6 | 57.5 | 幸英明 |
14 | アブキールベイ | 牝3 | 53 | 坂井瑠星 |
15 | ロードフォアエース | 牡4 | 56.5 | 川田将雅 |
16 | シロン | 牝6 | 53 | 国分恭介 |
17 | キタノエクスプレス | 牡7 | 57 | 国分優作 |
18 | ヨシノイースター | 牡7 | 58 | 内田博幸 |
北九州記念は1966年創設。当初は芝の中距離戦だったが、2006年に芝1200mへ短縮されたことで、サマースプリントシリーズの要として現在の位置づけが確立された。
以降、ママコチャ、ジャンダルム、スリープレスナイト、アストンマーチャンなど、後のスプリントG1馬がここを経由して頂点へと駆け上がっている。まさに“短距離王への登竜門”といえる一戦である。
小倉芝1200mの舞台設定は、レース展開を大きく二つのシナリオに分ける。
注目すべきは、2024年から開催時期が8月から6月末~7月上旬へと繰り上がった点。従来よりもフレッシュな馬場での施行となり、高速馬場がデフォルトになる可能性が高い。
つまり、シナリオAの発生確率が上昇し、たとえ速い流れでも前が残る展開──逃げ・先行有利の傾向が、今後のスタンダードになる可能性が高い。
ヒビキ
北九州記念の最も顕著な傾向の一つが、牝馬の圧倒的な強さである。過去10年で3着以内に入った30頭中、18頭が牝馬(60%)。しかも、芝1200mへと変更された2006年以降、牝馬が馬券圏外に沈んだ年は一度もない。連対がなかったのも、2012年と2013年のわずか2回のみ。
とくに印象的なのが、以下のような軽量牝馬の激走例だ。
いずれも軽ハンデを武器にして、極限のスピード勝負を制している。
<今年出走予定の牝馬> |
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アブキールベイ(53キロ) シロン(53キロ) スリーアイランド(52キロ) ドロップオブライト(56キロ) バースクライ(54キロ) モズメイメイ(56.5キロ) ヤマニンアンフィル(53キロ) レッドヒルシューズ(53キロ) |
ヒビキ
北九州記念が波乱含みのレースとされる最大の要因は、ハンデキャップ戦であることに尽きる。以下の高配当は、軽量馬の台頭と、人気馬の信頼性の低さによってもたらされている。
鍵を握るのは、年齢や性別によって斤量の恩恵を受ける3歳馬と牝馬。軽い斤量が短距離戦でのパフォーマンスに直結し、ボンボヤージやヨカヨカのように、絶対的なスピードを持つ軽量馬が大仕事を成し遂げる構図が何度も繰り返されている。
この構造の中で、上位人気馬の信頼性は極めて低い。過去10年で1番人気は未勝利、2番人気も1勝のみ。特に牡馬の上位人気馬の凡走は顕著であり、実績や名声ではなく、当日の馬場状態と斤量がモノを言う一戦である。
ヒビキ